EBSDによる結晶構造および結晶方位の広領域測定(結晶解析)
結晶構造や結晶方位を評価するEBSD法は、従来から測定面積が小さいという課題があり数ミリメートルにわたる広い領域の測定には不向きでした。
今回、当社では低倍での測定手法を確立したことによって、従来では評価困難であったサブミリオーダーの大きな結晶粒を持つ材料に対して、
広域のEBSD解析が可能となりました。
この測定手法を用いて、金属溶接部および軟磁性材料(パーマロイ)の広域EBSD解析を行い、結晶方位や歪の評価を行いました。
開発概要
金属材料において結晶粒のサイズがその材料の特性を大きく変化させる場合があります。
たとえば、軟磁性材料の場合、結晶粒のサイズと歪によって磁気特性が変化し、一般的に結晶粒を大きくすることで
直流磁気特性が向上することが知られています。
また、溶接金属においては結晶粒の粗大化や結晶の異方性が低靭性化を引き起こし、割れの原因となる場合があります。
結晶構造や結晶方位を評価する方法の1つとしてEBSD法がありますが、従来の測定モードではその測定面積は最大でも1mm四方程度でした。
それに対して、今回、低倍でも測定を可能にするLDFモードでの測定手法を確立したことによって、
最大3mm×9mmの面積が測定できるようになり、従来では評価困難であったサブミリオーダーの大きな結晶粒を持つ材料のEBSD解析が可能となりました。
EBSD解析から得られる主な情報
・結晶方位(IPFマップ、極点図、SchmidFactorマップ)
・歪(KAMマップ、GRODマップ、GAMマップ、GOSマップ)
・結晶粒径
・結晶相(Phaseマップ)
主な測定適用対象
・結晶粒が大きい材料(パーマロイ、電磁鋼板等)
・溶接ビード、熱影響部、母材を含めた広領域の溶接部
測定事例1
軟磁性材料(パーマロイ)断面のIPFマップ
軟磁性材料(パーマロイ)断面のKAMマップ
IPFマップ(上段)から結晶粒がサブミリオーダーであり、そのれらの結晶粒の結晶方位を示すカラーに統一性が見られないことから、
特に顕著な結晶配向性は認められないことがわかりました。
KAMマップ(下段)から広い範囲で歪が少ないことがあきらかとなりました。
(青色ほど歪が少ない。)
測定事例2
鉄鋼溶接部断面のIPFマップ
ビード全体の広範囲にミリオーダーの柱状組織が存在していることがわかります。