レーザーフラッシュ法による粉体の熱伝導率測定


 開発概要

 “粉体”の熱伝導率は材料固有の物性値だけでなく、粉末間の隙間を満たす気体も含めた混合系で評価をする必要があります。
 粉末の熱伝導率測定には一般に熱線法が使われます。
 しかし、この手法はヒーター線で加熱し、ヒーター周辺にある粉末の影響のみを測るため、 粉体の熱伝導率の重要因子であるかさ密度や測定雰囲気の影響を加味した測定には向いていません。

 今回、レーザーフラッシュ法を用いて“粉体”としての熱伝導率を測定できる手法を開発しました。
 本手法は、試料厚みを通過した熱を測定するため、かさ密度・測定雰囲気の影響を含めた測定が可能になっています。

 分析概要

 (1)使用装置 :レーザーフラッシュ法熱定数測定装置
 (2)測定雰囲気 :大気、Ar、N2
 (3)測定温度範囲:室温〜1200℃


 測定事例

 測定温度:室温  材質:SKD61、形状:粉末(粒度 +15/-45 µm)、かさ密度:4.50 g/cm3

測定雰囲気
粉体の熱伝導率
(W/mK)
気体の熱伝導率
(W/mK)
バルク体の熱伝導率
(W/mK)
大気
0.180
2.41
22
N2
0.174
2.40
22
Ar
0.130
1.63
22

 【 解説 】
 粉体の熱伝導率は測定雰囲気の影響を受けるため、測定雰囲気ごとに測定値が異なっています。
 また、かさ密度にも影響を受けますが、かさ密度は粒子径分布・形状などの影響を受けています。

 【活用例】
 金属積層造形では造形の精度向上や効率化を目的に、シミュレーションを利用して造形条件の最適化を図っています。
 信頼できるシミュレーション結果を得るには実態に近い情報(物性値など)を使うことが重要です。
 現在は粉末の物性値としてバルク体の値が代用されますが、本測定により粉体の熱伝導率の実測値を適用することができます。


 【 解説 】
 レーザーは粉体中において粉末に反射したり、吸収されながら進んでいきます。
 そのため、バルク体とは熱の伝わり方が異なります。