X線回折による磁石の配向度および磁化容易軸の評価



 はじめに

 異方性磁石の重要な特性の一つに残留磁束密度があります。
 磁化容易軸の向きが揃うほど、すなわち結晶配向度が高いほど、着磁後の残留磁束密度は大きくなります。
 このことから着磁前の結晶配向度を把握することは異方性磁石の開発や生産ラインの品質管理の面で極めて重要です。
 通常、着磁後の磁気測定結果から算出するものを、着磁前にX線回折の極点図測定結果から残留磁束密度に 対応する結晶学的配向度の算出を可能としました。
 加えて、磁化容易軸の角度算出も可能としました。

 調査方法

 (1)試料作製
 外形に対し磁化容易軸の方向が既知のネオジム磁石から切り出しを行い、磁化容易軸が0〜50°の角度の立方体の試料を作製しました。

 (2)磁気測定
 直流自記磁束計により残留磁束密度を測定しました。

 (3)結晶学的配向度および磁化容易軸の算出
 X線回折による極点図測定(測定面:006面)の解析により結晶学的配向度および磁化容易軸の算出を行いました。

 結果

 【結晶学的配向度】
 磁化容易軸の磁化方向への射影成分をX線回折強度の分布から評価します。*
 *粉体および粉末冶金,50,45(2003)

 【磁化容易軸の角度】
 極点図のプロファイルにガウス関数をフィッティング**させた際の座標軸の傾きから磁化容易軸の角度を算出しましました。
 **日立金属技報,30,20(2014)
 【結晶学的配向度および磁化容易軸の角度の算出手順】

 【磁気的配向度】
 磁気的配向度=Br (残留磁束密度)/Js (飽和磁化)

 結晶学的配向度と磁気的配向度の関係
 結晶学的配向度は磁気的配向度とよく一致し、磁気的配向度がX線回折により評価可能であることがわかります。

 極点図から算出された磁化容易軸の検証結果
 磁化容易軸既知の試料の角度と算出された磁化容易軸の角度は良い相関性を示し、磁化容易軸方向がX線回折により評価可能であることがわかります